現実をそのまま書くことができないため、小説というかたちで発行された一冊。
読めば読むほど目を背けたくなるが、これが現実だ。
私たちの生活の中で、こういった光景を目にすることはまずありえない。しかし、これが習慣となってしまった地域は確実に存在する。
幼児売春、殺人を伴う臓器売買。
多くの人は、こう思うに違いない。
「そういったことが行われていることは知っている。」
じゃあ、幼児売春や臓器売買の実態を説明してください。
これを説明できる人はまずいない。
舞台はタイ。
日々行われている幼児売春ビジネス。
凄惨な描写が続く。
自分の産んだ子でさえも、自ら焼き殺してしまう、そんな生活がある。
幼児を売る大人。
本人はそれで生計を立てているのだから、彼らの中では道理の通ることなのかもしれない。
しかし、それを文化というひとつの言葉で片付けていいものか。
売るほうが悪いのか、買うほうが悪いのか。
そんな状況を看過している周囲が悪いのか。
これほどの現実を知らなかった私。
しかし、完全なる部外者であったとはいえないのだ。
我々が、よかれと思ってやっていることが、殺人に直結してしまうことだってある。
この本には、臓器移植と売られていく幼児、そしてお金で解決するごく一般の日本人の姿も描かれている。
この『闇の子供たち』は、映画にもなっている。ただ、扱う内容に残虐性が強いため、ソフトにつつまれてしまっている部分が多いらしい。
観たわけではないのだが、決定的な違いは事件を見る視点と聞く。この本では、中盤あたりが音羽(NGO所属)から見た描き方。映画では、南部(新聞社所属)から見た描き方らしい。
私にできることはなんだろうか。
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